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12月30日。いやだなんだとほざいたところで時間は人類平等に流れていくわけで、当然のことながらニューイヤーも着実に俺の元に近づいてきていた。
無事レポートを提出し、冬期休暇に入り、彼女のいないクリスマスはバイトで終えた。12月ももう終わる。どうにもできない時の流れが憎い。
年の瀬、19時。3連勤目を終えたその日、本来シフトは17時までで組まれていたものの、なかなか混雑が緩和されず結局俺が店を出たのはつい15分前のことだった。普段あまり歩かない時間は、帰宅中とみられるサラリーマンが多い印象だった。仕事に追われ定時上がりができなかったのだろうか。
社会人の仕組みはよくわかっていないが、年末は忙しいと聞く。俺も2年後、そんな現実を体験するのか。想像しかけて、やめた。自分の将来なんか、どうせろくなものになりはしない。
吐いた息が白い。澄んだ冷たい空気が頬を切る。誰かのやさしさに触れたいと思ってしまったのは、きっと寒さのせいだ。
「ありがとうございましたっ」
語尾が弾んだ幼い声に、足元ばかり見て歩いていた俺はふと顔をあげた。
穏やかな雰囲気の老夫婦が出てきたのは、街角のちいさなケーキ屋だった。にこやかに微笑みながら手を振っている。
流れるままに視線を移すと、一目見てケーキ屋だとわかる城を基調とした店の制服を着た少年がショーケースの上からひょっこり顔を出していた。その横で、同じ白の制服を着た女性が「またいらしてくださいね」と頭を下げている。想像するに、息子に手伝いをしてもらっている個人経営のケーキ屋みたいだ。
微笑ましい。あの少年は、将来実家のケーキ屋を継ぐのだろうか。就活を避けて過ごせる代わりに、それはそれで葛藤がありそうだな。自分が焦っていることもあり、就活に結び付けて考えてしまう思考にため息が出た。