あの夏、私のアイスクリームを買いに行くと云った貴方の背中にしがみつけなかった自分を幾度となく悔やんだ。悔やんで、嘆いて、憂いた。だけどそんな事をしたところで過去は変わってくれず、無情にも時間ばかりが流れていった。


だからね陽光。私はもう大切な人を、愛おしい存在を、二度と失ってしまわない様に、恥じらいも照れ臭さも捨てて何度だって陽向を抱き締めるよ。何が何でも私は彼を護ろうと想うよ。



「陽向の身体も震えてる。」

「あはは、祈ちゃんとお揃いだね。」

「陽向とのお揃いなら心から嬉しいよ。」



指と指を絡ませ合って、解けてしまわない様に力を込めて握り緊める。情けない震えすら、彼と同じなら安心できるし誇らしい。互いに見つめ合って、額を擦り付けて、笑い声をベッドの上で響かせる。



「そんなに可愛い事ばかり云うと、更に余裕を失くしてしまいそうだから困るよ。」

「もっと余裕を失くしてよ、もっともっと困ってよ。」

「悪戯っ子だね。」

「陽向もね。」



彼の手が私の服の裾を掴んで捲り、いとも簡単に脱がされたシャツはハラリと床の上へと舞い落ちる。露出した素肌と相手の素肌が合わさった温度はそれはそれは熱くて私の脳の融点に達した。



「祈ちゃん、愛してるよ。」

「陽向、愛してるよ。」



初めて経験する情事は、甘くて、胸が高鳴って、乱れて、ほんの少しだけ痛くて、そして痛みの何億倍も愛おしかった。