私は彼の、決して自らの弱音を隠そうとせずに打ち明けてくれる所が好きだ。私の弱さを全てひっくるめて温めてくれる所が好きだ。素直で嘘が付けない所が好きだ。今にも消えてしまいそうな儚さを纏っているのに、酷く美しい所が好きだ。どんな時でも色気を孕んだ穏やかな声で救ってくれる所が好きだ。
幾らでも云えるよ、陽向の好きな所なら永遠に挙げられると思う。それ位、私は彼に恋をして、私は彼を愛している。心から、愛おしいと想っている。
だから平気なの。そう云う陽向だからこそ私は自分の身体を捧げたいと願っているし、相手が陽向だからこそ恋人としてその先のステップへ進みたいと請うている。彼のシャツの釦に指を掛け一番上から外していく。
「例え痛くても良いよ。陽向になら、何をされたって良い。」
「祈ちゃん…。」
「だって、陽向の全てが愛おしいから。」
「…っっ…。」
「だから陽向、そんなに不安にならないで良いよ。一緒にその不安、半分こしようよ。」
一つ、また一つと釦を外せば、段々と襟元から服が開けていく。元より雪の様に白い肌だと云うのに、陽に焼けない衣類の下にある素肌は陶器みたいでより一層美しかった。
とても滑らかな相手の素肌が露わになればなる程に頬が火照りを増していく。刹那、彼の息を呑むまでの美しい肌に浮いている派手な傷痕が視界に飛び込んできた。
胸元に大きく一直線に入った傷痕は大変痛々しく、美しい陽向には似合っていないせいか余計に浮いて見えた。
「その胸の傷、どうしたの?」気が付けば私は、デリカシーもなく震えた声で彼にそう問うていた。痛々しく見えるのに、何故だか眼が離せない。決して好奇的な意味で視線を向けているのではなく、本能的にそれが気になって仕方がないのだ。
私の手が無意識に伸びて、胸元で目立つ傷痕を指でなぞる。ボコボコとした感覚が指先に走ったのも束の間、私の指は彼の掌に拘束されてしまった。