湿り気の残った私の髪が、皺の寄った白いシーツの上に散った。ベッドの軋む音が耳を掠め、私を組み敷いている陽向の艶やかな熱を孕んだ視線に射られた。心臓が大きく跳ねる。

いつにも増して色っぽい彼の毛先から滴り落ちる雫が私の首元に垂れ、鎖骨を撫でる様に流れていく。



「震えてる。」

「き、緊張してるの。」

「僕も祈ちゃんと一緒。かなり緊張してる。」



嘘だ。彼の台詞に対してそう思った。だって、クスクスと声を漏らしている彼からはとてもではないけれど緊張している気配を感じられない。こっちは今にも心臓が口から飛び出してしまいそうだと云うのに、私の双眸を占領する彼は頬を染める様子もない。寧ろ、普段以上に麗しかった。


そんな陽向に、私はまた恋に落ちる。彼が更に好きになる。彼への愛がまた一段と深まっていく。



「私には陽向が余裕そうに見えるよ。」

「まさか、そんな訳ないよ。その証拠にほら。」



相手に手首を捕らわれて、彼の左胸へと私の手が導かれる。ピタリとくっついた掌には、彼の心臓がバクバクと大きく脈打っているのがシャツ越しでも伝わった。嗚呼、本当だ。陽向も緊張しているんだ。その事実に口許が自然と緩んでしまう。


だけど不思議だ。こうして彼の鼓動を直に感じるのは初めてなはずなのに、私はこの鼓動をとてもよく知っている気がする。