結局、最後の最後まで何かが起こる事はなく、自宅に戻った私は自室にある机に突っ伏して若干…否、かなり傷心した。


もしかして、私には魅力がないのだろうか。私は彼と今以上の関係になりたいと切に望んでいるし、陽向になら身体を許す気持ちでいる。初めてだから先へ進む事に対する不安や恐怖こそはあるけれど、決してそう云う行為をする事が嫌な訳ではない。


だけど陽向はどうなのだろうか。彼は一体どう考えているのだろうか。冷静になってみると、私は自分の気持ちや考えばかりを優先していて、陽向の意思や感情を思い図る余裕を欠いていた。



「はぁ…私に触れたいって想ってくれていないのかな。」



こう云った具合で、あのお泊りを契機に、私は独りになると不意に頭を悩ませては、溜め息ばかりを落としている。

どれだけ思考を巡らせて自問したところで求めている回答を得られるはずもなく、かと云って自分なりに納得してすっきりと解決する訳でもなく、ただただ悶々とした表現のし難い複雑な感情を今日まで膨らませ続けている。


100%オレンジジュースの記載があるパックにストローを通してゴクゴクと喉を潤す。やはり私には、この甘酸っぱいこの風味が、カフェオレよりも美味に感じた。


大学の裏門は、余りにも人通りが少ない。規模のそこそこ大きいキャンパスなのに、ここを利用する生徒はごく僅からしくさっきからずっと私一人だけだ。因みに、ここから出て徒歩五分もかからない距離には私達の出逢った純喫茶がある。


思い悩みながら飲む大好きなオレンジジュースは、普段よりも味気ない。強い風が瞬間的に吹く度に揺れ動く見るからに寒そうな樹の枝をぼんやりと見上げていると、ぽたりと大きな雨粒が私の頬に落ちて弾けた。