青々とした葉を身に纏っていた樹の枝が、黄色や橙色等の暖色へと衣替えをして、かと思ったら紅葉を地面に散らし、再び緑葉を身に付け始める春の為に身体を休ませている。刺す様な風が容赦なく吹き付けて思わず肩を竦め、樹を見上げていた顔をマフラーに埋めた。


季節の移ろいがやけに早く感じる。ついこの間まで汗ばかりかいていた茹だる様な暑さの続く夏だったはずなのに、一瞬にして肌寒さを感じる秋が過ぎ、もうすっかり冷たい冬が訪れている。



クリスマスの装飾が至る所に施され立派なクリスマスツリーも登場し、あちらこちらでイルミネーションが催されていた街中も、イエスキリストの誕生日が過ぎたと同時に和風の装いに早変わりして、「師走」と云う文字通り世の中の人間が(きた)る新年に向けて忙しなく走り回った年の瀬も終わった。そうして今年も無事に新しい年を迎えたのが二週間前。


こんなにも時間の流れが刹那的に感じるのは、私の傍に居てくれる大切な陽向の存在があるからだろう。一日一日が実に短く感じて仕方がない。こんな感覚になるのは、幼馴染の貴方が私の隣に居た時以来だ。



「土砂降りになりそう。」



鼠《ねずみ》色の雲が厚く何重に覆っているのか、冬の寒さを和らげてくれる太陽が全く顔を見せてくれない。それどころか、今にも大粒の雨が落ちてきそうなまでの空模様を眺めて独り言を零す。

そうだった、「明日は雨らしいから冷えるかも。祈ちゃん、風邪引かない様にちゃんと温かい恰好してね」って、昨日彼に云われたのをすっかり忘れていた。



「どうしよう、ワンピース着て来たせいで寒い上に傘すら持って来てない。」



陽向の優艶な微笑を脳裏に浮かべながら、私は自らの犯した失態に苦笑を漏らした。