彼がどんな私でも肯定してくれるから、その優しさに泣いてしまいそうになる。友達から恋人へと変わったこの関係に慣れるにはまだまだ時間を要するのだろうけれど、その時間すらも愛おしい。
街燈の下を通り過ぎる毎に、地面に伸びる私達の影が繋がっている事実に胸が高鳴る。
好きになった相手が彼で良かった。この人と出逢えて本当に良かった。どうかこの温もりがずっとずっと私の傍にあり続けてくれますようにと、心の中でそっと神様にお願いする。
近々、陽光にも報告をしに行こう。心配性でいつだって自分よりも私の事ばかり考えていた貴方だったから、私の心配はしなくて良いよって、うんと自分の為に好きな事をしてねって伝えよう。
「あ、あそこが私の家だよ。」
「そっか。ここで祈ちゃんは生まれ育ったんだね。祈ちゃんの幼馴染の彼のお家は?」
「あの煉瓦が特徴的な西洋風の家。」
「いつか、いつか僕も挨拶しに行っても良いかな。」
「……うん、きっと陽光も陽向の顔を見たいと思う。」
「何て云おうかな、初めまして?祈ちゃんを大切にすると誓います?」
「あはは、何だか結婚する時に相手側の両親に云う台詞みたい。」
「僕にとってはそれくらい大事な挨拶だからね。」
至極当然の様な表情で言葉を紡ぐ彼の純粋さが、私の心に温度を与えてくれる。蜂蜜色の美しいその双眸に私だけを映していて欲しいな、なんて独占欲を抱いてしまう。