視線が絡んで結ばれただけで、胸がドキリと鳴る。彼が好きなのだと鼓動が訴える。
陽光以外に誰かをここまで好きになれるなんて、五年前の深淵に立っていた私には想像すらできない事だろう。おばさんに孫を見せると約束したものの心が生きる屍だった少し前の私には、全く考えもつかない話だろう。
でもちゃんと、私はこの人に心から恋している。この人に自分の全てを好きになって欲しいなって想うし、私の何もかもを知って欲しいなと想っている。例えどんな返事を貰おうとも、この気持ちは大切にしたいなって想えるの。
「祈ちゃん…あの、僕の方こそこんな風に云うと誤解されてしまうのかもしれないけど。」
「うん。」
「僕ね、祈ちゃんが抱えている過去も悲しみも含めて、祈ちゃんを恋しく想うよ。」
「え?」
返された答えが自分の予想を遥かに裏切ったそれで、無意識に口から間抜けな声が漏れていた。目を丸くする私の前で、段々と頬を桜色に染めていく彼が恥ずかしさから逃れる様にゆるりと口許に弧を描く。
その笑みが酷く優艶で、心がときめく。
「僕は心の底から、安桜 祈ちゃんが好きです。」
「…っっ…。」
「だから、これからの時間を僕と過ごしてくれる?祈ちゃん。」
冷えた私の手を包むように覆い被さった彼の手の温もりに、あっという間に視界が滲んでぼやけていく。
「嘘だぁ…。」
「嘘じゃないよ、本当。好きだよ、祈ちゃん。」
すっかり涙で濡れた言葉を拭う様な陽向の言葉は、不安定で覚束ない私の心を抱き締めてくれた。