「嬉しいよ。」

「え?」

「凄く凄く嬉しい。陽向が私に声を掛けてくれたおかげでこうして仲良くなれた。ありがとう陽向。」



笑って涙を浮かべるなんて何年振りだろう。濡れた目尻を指先で拭って素直な感情を相手にぶつけた。頬がこれでもかと緩んでしまう、きっと私は酷くだらしない表情を浮かべている事だろう。



「こちらこそだよ。」



鼓膜を突いたのは、陽向の柔らかな声だった。どんな表情でも陽向は美しいけれど、こうして子供みたいに破顔している表情が私は一番好きだ。儚くて美しい彼が、とても好きだ。



「僕と出逢ってくれて、僕と仲良くしてくれてありがとう祈ちゃん。」



いつだって彼の言葉は透き通っていて、濁りがない。頑なに閉ざしていた私の心にすんなりと入って溶け込んでしまう陽向の声と、彼の紡ぐ言葉に、ドキドキと鳴り止まない私の心臓。



「ねぇ、祈ちゃん」彼がそう言って首をコテンと傾ける。それに合わせてサラサラと桜色の髪が流れていく。ストローを吸ってカフェオレをゴクゴクと飲みながら、私は相手の次の開口を待った。

店内に流れるクラシックの旋律が美しくて、やっぱりこの純喫茶が今日の優勝かもしれないななんて思った刹那だった。



「僕は、祈ちゃんが好きです。」



何の前触れもなく余りにも真っ直ぐな告白を彼が私に贈るから、私は目を見開いて状況を呑み込むのに時間を要した。