簡潔に結論から述べると、海里のあの発言に隠された真意や彼の意図に辿り着く事はできなかった。海里の性格から察するに、私が立ち止まらずにいられる様に放った言葉だと云う事に間違いはないと思う。

ただ、海里の言葉に含まれた意味はそれだけではない気もする。だからこそ他にどう云う気持ちを込めて彼が開口したのかと思案に思案を重ねてみたけれど、やっぱり判らなかった。



「私の心の中で、陽光が生きているって意味だったのかな。」



そして私なりにどうにかこうにか絞り出した答えがこれだった。しかしながらやはり違和感は拭えないし、ぴったりとパズルのピースとピースが当て嵌まった様な快感もなかった。


つばの広い麦藁帽の影の中、悶々とした感情を抱えながら頭を悩ませる。日焼け対策はしっかりして来たものの、いざ直射日光に皮膚を晒すと焼けてしまわないかと不安になる。

白いレースのリボンが可愛い麦藁帽だけでは心許ない。やはり日傘も持って来るべきだったのかもしれない。そんな後悔を募らせていた私の視線が、行き交う人の中から桜色の髪を見つけた。


胸がドキリと、音を立てる。



「ごめん、もしかして待たせちゃった？」



相手もこちらに気づいてくれた様で、小走りで改札を潜り抜け私の目前で足を止めた。淡い夏らしい色のハイウエストのジーンズに、皺のない白シャツとクリーム色のベストを合わせたシンプルな服装は、雪みたいに白い彼の肌にとてもよく似合っている。

日傘を差している所を見た憶えたは一度もないと云うのに、陽向の肌は日焼け知らずで実に羨ましい。



「ううん、私も丁度着いたばっかり。」

「そっか良かった。」

「それじゃあ、レトロ純喫茶巡り出発する？」

「うん。あ、ちょっと待って祈ちゃん。」



歩き出そうとした私の腕がほんの少しだけ冷たい彼の手によって捕らわれた。少し驚いてくるりと相手の方へ顔を向ける。私の双眸を、ふんわりと微笑む麗しい陽向の顔が独占した。