どうかしたのだろうか。相手の表情の意図が汲めず、首を横に折った。
「祈姉ちゃんって、その友達が好きなんじゃないの?」
投げられた質問に「え」と短く声が漏れる。海里と全く同じ表情を見せた私の頭の中は、一瞬にして真っ白に染まった。
私が陽向を好き?
「話を聞く限りそうとしか思えないよ。ていうか、絶対好きでしょ。」
「そんな…「だって、普通友達に対して胸が締め付けられたりしないよ。」」
開口しかけていた私の言葉をぴしゃりと遮断した海里の一言に、酷く困惑する。私が陽向を好き。そんなの、考えた事もなかった。海里に指摘された内容を咀嚼するばする程、確かに陽向を前にした時の自分の心身の反応は、友達に対するそれとは逸脱しているなと感じる。
だからこそ反論の言葉が何も出てこなかった。
真っ白になった頭に唯一浮かぶ陽向の顔に、胸がドキリと音を立てる。そしてすぐにバクバクと心音は大きくなり、頬がジワジワと熱を孕んでいくのが分かった。
「それに何より、その人の事を話している祈姉ちゃんの笑顔がとっても綺麗。それが祈姉ちゃんが友達の彼を恋愛対象として好いていると云う何よりの証拠だと思うけど?」
面白い遊びを見つけた子供の如く、ニヤリと口角を吊り上げた海里が徐に伸ばした手が、私との距離を縮めていく。