無論、依然として彼の中に陽光の存在を感じるけれど、それも含めて陽向はミステリアスな人間だ。


星が降りそうな夜とは、今日みたいな日の事を言うのだろうか。夜空を飾る星の一粒一粒がとても美しく煌めいている。織姫と彦星を隔てる天の川も雲一つ掛かっていない。

この時期になるとアイスクリームをコンビニで買って、ベランダから陽光と天体観測を開催していた記憶が蘇る。



特別星に知識がある訳でもないのに二人して夏の大三角形を探したり、本と照らし合わせながら星座を見つけてはよくはしゃいでいた。陽光はアイスクリームまでもカフェラテ味を選んで飽きもせず食べていた。

小説の世界に飛び込んでばかりいる陽向も、私と同じ星空を見上げていたりするのかな。そう思うと、とても彼に会いたくなる。陽向の顔を見たくなる。



「謎だらけだけど、彼を見てると胸がギューって強く締め付けられたり、高鳴ったり、無意識に彼が今何をしているのかなって気になったりするんだよね。」



自分でも不思議だ。どうして私の頭や心はこんなにも陽向を気に掛けてばかりいるのだろうか。胸が熱くなったり、身体が火照ったりしてしまうのだろうか。


刹那的に強く吹いた風にワンピースの裾がヒラヒラと翻り、ポニーテールした髪が靡く。余りの突風に思わず瞼を伏せて、風が弱まったと同時にそれを持ち上げる。開けた視界に映ったのは、驚いた表情を浮かべている海里の端整な顔だった。