どんな人なのだろうか。冷静に考えてみると、私は陽向がどんな人物なのか詳細に答えられる自信がない。彼の説明をできる程の情報を、私は有していないのだ。
数十歩進んだ先にある我が家へは、案の定すぐに到着してしまった。「安桜」の表札がある門の前で、私達は足を止めて対峙した。
「謎だらけ。」
「え?」
「とても謎のベールに包まれている人としか答えられない。実のところ、私も彼の事をそこまで多くは知っていないんだよね。」
「彼って…祈姉ちゃんのお友達って、男の人なの?」
「うん。喫茶店で初めて会って、その後大学で会って、そこから少しずつ話しをする様な関係になって、気付いたら仲良くなってたの。」
冷静になってよくよく反芻してみると、私と陽向は互いに深く干渉していなかった事に気付く。それが心地良かったのは確かだけれど、今の私はどうしてなのかその事実に虚無感を抱いている。
もっと陽向を知りたい。そう思った。陽向について何一つよく知らない事がとても悲しく感じた。
時々、陽光本人なのではないかと錯覚してしまう瞬間が彼にはある。最初こそはそんな陽向に関心を抱いた。しかしながら今の私にはそれ以外にも彼と仲良くなりたいと想う理由が沢山ある。
派手な外見とは裏腹に内面は繊細で温かい所や、彼の纏う儚い雰囲気や、すぐに散ってしまう満開を迎えた花の様な美しさ。クスクスと上品に笑う仕草だとか、優艶な微笑をぶら下げて私の話に相槌を打ってくれる所だとか…彼の魅力を挙げ出すと実に終わりがない。