ストローを通して口腔内へと入って来たカフェオレの味は、この間、違うカフェで飲んだカフェオレと同じ味がした。やはり私には違いがよく分からないらしい。



「どの辺が違うの?」

「……。」

「ここのはミルクがこうだとか、甘さはこうだとか…今度はちゃんと聴くから、前みたいに教えてよ。」

「……。」

「ねぇ、教えてよ陽光。」



どれだけ台詞を放っても、もう何も返って来ない。我が儘な私に渋々付き合ってくれる彼はもう何処にもいない。端整な顔に微笑みを浮かべて、私の零す愚痴を頷いて聴いてくれていた貴方を何度探しても見つからない。


胸が痛く締め付けられる。喉が詰まる様な苦しみを覚える。ストローを咥えている唇が震えている。涙腺が緩んで視界が滲んだ。



嗚呼、どうしたんだろう。今日の私はいつも以上に泣き虫だ。きっとこの季節が巡ってきたからだね、貴方を失った暑い夏がやって来たからだね。


陽の光が射し込む窓へ視線を投げて、茹だる様な暑さに包まれている外を双眸を潤ませたままぼんやりと眺める。



叶う事なら時を戻したい。あの日に戻って、鍵を持って私の部屋を出ようとしていた貴方の背中にしがみつきたい。「行かないで、行っちゃ駄目」そう叫びたい。