切り替わった視界が捉えたのは、少し驚いた表情をしてこちらを見ている陽向の姿だった。今度は私が驚く番だった。



「どうして陽向がここにいるの?」

「祈ちゃんこそどうしてここに?」

「あ、私はここの近くに家があってこの洋菓子店は中学生の時から通ってたの。」

「そうなんだね、因みに僕はここのカフェオレパンナコッタを買いに来たの。」

「え…。」

「初めてこの駅に降りたけど、とても良い雰囲気の街だね。不思議と懐かしく感じるよ。」



花が綻ぶかの如く陽向の美しい顔に咲く微笑み。たった今起きた偶然のせいなのか、胸がドキドキと踊っている。頬に触れる桜色の髪を耳に掛け、連なったピアスを露出させた彼は、いつもいつも心臓に悪い。



ざわめく心音が彼にまで届いてしまいそうで、咄嗟にワンピースの上からぎゅっと抑える。心臓が大きく脈を打っているのが指先にダイレクトに伝わった。

陽光を前にした時と同じ反応を見せる自分の身体に私が一番戸惑っている。外気の暑さとは違う内側から感じる火照る様な熱に、くらくらして酔ってしまいそうだ。



「何軒か行きたいお店があって迷ったけれどここに来て正解だったかも。」

「へ?」

「だって、祈ちゃんに会えたから。」



蜂蜜色の双眸に捕らわれた私の体内に、これでもかと心臓が弾む。


ねぇ、どうして…。



「いつも綺麗だけれど…。」