正直に打ち明けるとこの先も陽光のいない寂しさは埋まらないと思う。心にぽっかりと穴が開いたままだし、ある日ふらりと私の部屋に陽光が現れてくれたりするんじゃないかと願っている自分もいる。
「この間、陽光のお母さんに孫の顔を見せるって、恋人もいない癖に約束したの。実のところ、その約束を私に果たせるのかなって今更不安になってる。」
あははと力なく零れた笑いが蝉の声に掻き消される。流石にこんなに朝早くにここを訪れる人間はいないらしく、閑散としていて私しかいない。
また今年も泣いてしまうのではないかと云う不安が拭えなくてひっそりと人のいない時間に訪れたけれど、どうやら今回は大丈夫みたいだ。悲しい気持ちは多いけれど、涙腺は緩まないし視界も涙で歪んでいない。
私が涙を落とすと阿呆みたいに優しい陽光が大袈裟なまでに心配する様が目に浮かぶ。目に浮かぶから、もう貴方の前では泣かないよ。
「大学に入って三年になるけれど、最近やっと友達ができたの。難波 陽向って名前でね、陽光みたいにカフェラテが大好きで儚くて綺麗な人だよ。」
ふわふわしていて、いつもゆるりと破顔させている陽向の麗しい顔が瞼の奥に映る。サラサラと風に揺れる桜色の髪と色素の薄い蜂蜜色の瞳を思い出して、いつか陽光にも陽向を紹介できる日が来たら嬉しいな、なんて考えを馳せる。
徐々にジワジワと強さを帯びて来る紫外線が肌を刺す。日傘を持って家を出た選択は正解だったらしい。レースで縁取られた大きな影が地面に伸びる私のそれをすっぽりと覆った。