まだ暗い朝五時に自然と目が覚めた。夜更かしして陽向から借りた小説に熱中していたのに、八時間の睡眠を取った位に寝起きは良くて、清々しい気持ちがする。



陽光の存在していた証が至る所に点在している私の部屋の景色は、五年前と比べると大きく変わった。本棚に並べられている参考書の種類も全て顔触れが変わったし、インテリアも新しくなった物が多い。


花を愛でる思考回路なんてなかったのに、今では白い壁にドライフラワーが吊り下げられている。変化しているそれ等に目が触れると、確実に時間は経過しているのだと痛感する。



『部屋に花を飾る趣味なんてあったっけ?』



目を丸くしながら首を傾げる彼の姿が容易に想像できて、自然と笑みが浮かぶ。


陽光の香りがこの部屋から消えたばかりの時、カチカチと時を刻む音を響かせる秒針が孤独になった私を嘲笑っている様に聴こえて、ベッドに潜っては両耳を抑えて現実に脅えてばかりいた。




泣き疲れて眠る夜を何度過ごしたかも分からない。ただ、今は時計の秒針が微笑んでいる様に感じる私は、あの時と比べると人間として成長できているのかもしれない。まだまだだけれど、貴方にちょっとだけ胸を張って近況報告できる位には強くなれたと思う。



手繰り寄せれば貴方の爽やかで凛とした香りが鼻を掠めたシーツも、ボロボロになってネット通販で海外から取り寄せた洒落たデザインの物になった。そこから抜け出した私は、前日に準備していたワンピースの袖へ腕を通した。