陽光は陽光。陽向は陽向として考えなくちゃ。そうでなくては余りにも失礼だし、何より二人を比べる自分が最低に思えてならない。



すっかり指定席になった学食のテラス席。突っ立っているだけでも汗がジワジワと毛穴から吹き出るこの季節にわざわざこんな席を選ぶ物好きな人間なんておらず、いつも私と陽向の二人きりだ。



空調が効いていて快適そのものの中で食事くらいすれば良いものを、何故か私達は好き好んでこの席に座っている。彼と初めてまともに話したあの日にも座っていたこのテーブルは、木陰になっているから思いの他涼しい。

パラソルも開いているから大敵である紫外線はしっかり遮断されている上に、人がいないからとても静かだ。



「ねぇ、ずっと気になっていたんだけど。」

「ん?どうしたの?」



ピーマンの肉詰めの主役と云っても過言ではないピーマンを切り離して皿の端に寄せ集めている相手が手を止めて、私を見た。


夏休み前のテストが今日漸く幕を下ろした。こっちは寝不足の中無理矢理頭に知識を詰め込んで挑んだせいで疲労困憊なのに、陽向は目の下隈ができている訳でもなければ疲弊した感じがまるでない。


肌理(きめ)細やかな白い肌は相変わらず毛穴も肌荒れも知らない程に滑らかだ。それに風が吹く度に、陽向からふんわりと舞う甘い香りが私の鼻腔を掠めていく。



「陽向のピンク色の髪、綺麗に手入れされてるよね。どうしてそんな目立つ色にしたの?」

「桜の花が好きだから。」

「え、それだけの理由?」

「駄目かな?僕にとっては立派な理由だよ。それに…。」



“祈ちゃんが好きな色だって知ってからは、この色がもっとお気に入りになった”



ゆるりと口角を持ち上げた相手はとても美しくて、不覚にもキュンと胸の奥が疼き、見惚れてしまった。