朝も一緒にご飯を食べて談笑して、行ってらっしゃいって抱き締め合ったはずなのにもう彼の存在が恋しくなってしまっている私は、玄関扉まで早歩きで迎えに行く。



「陽向!お帰りなさい!」

「うわっ、びっくりしたぁ。」

「ふふふっ。びっくりすると思った。」

「祈ちゃんってば、悪戯っ子だね。」



勢いよく扉を開け放ってその先で佇んでいる相手に飛び込めば、一驚を喫した様子を見せながらも彼の腕が私の身体を抱き止めた。あ、陽向の香りだ。私の大好きな陽向の体温だ。

ニットのベストに顔を埋めて思う存分息を吸う。離れていた時間の分、彼を摂取して満足した私は顔を上げて破顔した。



「仕事終わりにメッセージ確認したら梨持って実家行くって書いてあって、居ても立っても居られなかったんだよ?」

「お母さんにも臨月なのにホイホイ歩くなって叱られたの。心配で来てくれたの?」

「当然じゃない。それに、一刻も早く二人に会いたかったから。ただいま、祈ちゃん。ただいま、赤ちゃん。」



秋夜の仄かに肌を冷やす凛とした空気が私達を包んでいた。蕩ける様に蜂蜜色の双眸を揺らす相手が私の頬にチュッと唇を落としてから、私のお腹を撫でる。この習慣ももう少しで無くなってしまうのかと思うと寂寞感に駆られなくもない。


陽向の声に応えて動く我が子は、もう既に親孝行な娘である。