切り分けたケーキの乗った皿三枚を持って現れた母親が、次こそちゃんと正面に座った所で三人の女子会が幕を開けた。それからはもう話に花が咲き乱れ、ハーブティーが冷めるのも忘れて会話に耽り、気付いた時には西日が射し込みやがて外は暗くなっていた。


海里が全く恋をする気配すらないと云う話題が終わった頃、夕食の準備を思い出したおばさんと母親が驚異の速度でテーブルのカップと皿を片付けた。同性ながら、主婦の切り替えの早さは凄いなとつくづく思う。



「それじゃあまたね。祈ちゃん梨ありがとう、陽向君にも宜しく伝えてね。気を付けて帰るのよ?」

「はーい。」

「赤ちゃんも、またね。次会う時はお顔を見られるかしら?楽しみにしてるね。」



私のお腹に触れてにっこりと微笑んだおばさんは、とても綺麗だった。

おばさんが帰った実家は静けさを取り戻し、お母さんが食材を刻んでいる音が響いていた。ついさっきまでケーキのお代わりを食べていた人とは思えない。流石熟年した主婦だ。


こんなに長居するつもりなかったし、私もそろそろ帰ろうかな。温《ぬる》いを通り越して冷たくなっていたハーブティーの残りを一気に流し込む。帰路の途中で尿意を催したら大変だと思いお手洗いを済ませてから暫く確認していなかった携帯を手に取れば、陽向からのメッセージが十五分前に届いていた。



『梨持って行ってくれたんだね!祈ちゃんの実家にお迎えに行くから一緒に帰ろう』



メッセージの文を読んだだけで口許が脱力する。『ありがとう、待ってるね』と返事を送れば、すぐに既読が付いて『もう少しで着くよ』と画面に新しいメッセージが表示される。


そこからピンポーンとインターホンが鳴るまで五分も掛からなかった。