おばさんと約束を交わした日から一週間が経った。あれから家に帰って自室のベッドに寝転んで色々と思考を巡らせたけれど、やっぱりそんな急に気持ちに区切りを付けるなんて事はできず、至る所に陽光と過ごした証が残っている部屋をぐるりと見渡して寂しくなった。



別れ際におばさんは「前みたいに晩ご飯を食べに来てね、海里(かいり)も祈ちゃんに会いたがってるから」そう云って、私が自宅に入るまで見送ってくれた。



私の世界から陽光がいなくなってしまってから、中々陽光の家に足が向かなかったけれど、おばさんのお言葉に甘えて久し振り遊びに行こうかなと思っている。陽光には二つ下で牧瀬 海里まきせ かいりと云う名前の弟がいる。


陽光と海里は双子に間違われるくらいそっくりだ。どっちも母親であるおばさんに似てイケメンと云うよりは綺麗と云う形容がよく当て嵌まる。



陽光の家に行けないでいる理由の一つが海里の存在だった。海里を見ると、どうしても陽光と重ねてしまいそうな気がして会うのを躊躇ってばかりいた。あんなに私を慕ってくれていた海里から、私は自分の都合だけを言い訳に逃げていた。


だけどもう、そんな生活にも終止符を打とうと思う。牧瀬家にお邪魔する時には、海里の好きなケーキを買って行こう。少しずつになるかもしれないけど、きちんと現実を受け入れていこう。



「そっか、海里ももう大学一年生か…「ここ、座っても良い?」」



学食目当ての学生で賑わっている空間から逃れる様に外のテラス席に座って日替わりランチの冷製パスタを咀嚼していると、向いの空席に私と同じ日替わりランチの乗ったトレイが置かれた。