仕事が忙しいから。担当している仕事を片付けてから。その内治るから。睡眠さえ取れれば良くなるに決まっている。兎に角色々な言い訳ばかりを自分の中で並べた。だけど現実問題として身体はとうに限界を突破していて、本息でいつ倒れるか分からないと云う状態にまでなってしまっている。



平日は仕事があるからだとか、土日は病院の診療が休みだからだとか、理由を付けて逃げ続けたせいで見る見るうちに痩せこけて、体重は7kgも落ちてしてまった。振り返ってみても、体調の異常に明確に気づいた日からまともな食事を碌に摂れていない。


やっと食べられたと思った矢先、気分が悪くなってトイレへ直行。食べては嘔吐、食べては嘔吐の繰り返しでもう食べ物を口の中に入れる事さえ恐くなってしまった。



結婚記念日はもうすぐそこにまで迫っていて、本来ならば日に日に嬉しさが増していくはずなのに今回はそれよりも自分の体調の異常が日に日に目立ってそれに比例して自ずと思考回路も陰鬱になってしまっている。


会社のお昼休憩は殆ど机に突っ伏して過ごしていた。スポーツドリンクを摂取して飲めそうだと思った時には野菜ジュースを飲む事を意識。果実が入ったゼリーを食べられれば御の字で、それ以外の食べ物が一切身体が受け付けない。



同期からも先輩からも「難波さん大丈夫?ちゃんと休んだら?」と声を掛けられる始末で、猫の手も借りたい程の繁忙期にここまで体調を崩している申し訳なさも段々と大きくなっていた。


こんなにも長引くとは思っていなかった。そんな自分への言い訳も、もう通用しない位に肉体的にも精神的にも追い詰められていた。ここまで来ると何らかの病気である事に間違いはないだろう。病院で医師から病名を宣告される己を想像しただけで強烈な不安と恐怖が襲い掛かる。



入院になったらどうしよう。そう思案した私の脳裏にまず最初に浮かんだのは、愛する人の柔らかな笑みだった。