どうして誰も私を責めないのだろうか。強く責め立てられた方がよっぽど楽だったと思う。自分の抱えている罪を償えと云われた方がよっぽど生き易かったと思う。
だけど私の周りにいる人達は皆、残酷なまでに優しい。罪悪感に打ちのめされている私の首を、その優しさ達が緩やかに絞め付ける。
「約束してくれる?祈ちゃん。陽光の分も人生を謳歌して、私に孫の顔を見せるって約束してくれる?」
「私で…良いんですか?」
「祈ちゃんじゃなきゃ駄目なのよ。だって祈ちゃんは可愛い娘なんだもの。」
濡れた頬を拭ってくれる相手は、瞳を潤ませても尚、優しい笑顔を咲かせている。私より苦しいのはおばさんの方なのに。自分の最愛の息子を失ったおばさんの方が一番辛いはずなのに。そんな相手に気を遣わせて、慰められている自分がとても情けなく感じる。
悲劇のヒロインぶって、いつまで経ってもウジウジしている私を見て陽光はどう思っているのかな。
分かっている。こうしてずっと立ち止まったままではいけないって本当はずっと分かっている。私は時が経つのが恐かったんだ。陽光はあの夏の日のままなのに、私だけが年を取って陽光のいない環境に慣れてしまう事に怯えていた。
陽光が私を責める様な人間じゃないと知っているからこそ、私は自分自身を許せなかった。今だって許せていない。あの日、陽光の背中に抱き着いて引き止めなられなかった自分が憎くて堪らない。