茹だる様な暑い夏が今年もやって来た。相変わらず今年も晴天で、太陽が眩しいせいで空を見上げるのもやっとだ。蝉の大合唱も健在だ。

貴方を失った日から、今日で十三年。この月日は長い様で実にあっという間だった気がする。



「ねぇ、パパ、ママ。ここには誰が眠っているの?」



墓石の前に供えられた花束とカフェラテ。地面に伸びる影は、いつの間にか私独りから三人になっていた。私とお揃いのポニーテールを揺らしながら、私達を見上げる新しく増えた愛しい存在が、可愛い声で質問を投げる。



「とっても大切な人だよ。ママとパパを結んでくれた素敵な人が眠っているの。」

「大切な人?素敵な人?」



陽向とよく似ている長くて放物線を描いている睫毛を瞬かせ、不思議そうに首を捻っているこの子にもいつか分かる時が来るのだろう。私達の間に起こった信じ難いまでの尊い奇跡をきっとこの子が理解するのも、そう遠い話ではないのだろう。



「そうだよ、星光(あかり)。パパはね、ここに眠っている人に救われたんだよ。」

「そうなの?それならお礼云わなくちゃ。…パパを助けてくれてありがとうございます。」



自分から突然ぺこりと頭を下げた娘の姿、私と陽向を吃驚した顔を見合わせる。そして自然と、お互い頬を緩めて目を細めた。


貴方を失った時に私の心は色褪せた。けれど、陽向と出逢った日から少しずつ、少しずつ、色褪せた心に色が付き始めた。







































「祈、祈の心の色はちゃんと戻った?」



貴方がゆるりと口角を吊り上げてそう云っている気がして、私は大きく頷いた。