「例えどれだけ可能性が低いとしても、可能性が(ゼロ)ではない限り現実になり得ると俺は思う。」

「…っっ。」

「祈姉ちゃん、その陽向って人と幸せになって良いんだよ。だって祈姉ちゃは、陽向さんを愛しているんでしょう?」

「……愛してるっ……愛してるよ…。」

「それじゃあ何も問題はないんじゃない?」

「陽向に…陽向に会いたい。陽向に会って、話を聴かなくちゃ…。伝えなくちゃ…。」



今、無性に貴方の顔が見たい。貴方の温もりと香りに飛び込んで、何も聴かずに逃げてごめんなさいと謝りたい。整理できていなくても、自分の感情をそのまま伝えて駄目なら駄目でまたその時考えれば良い。

だって生きているから。生きているから、陽向を愛しているのなら振られてもまた振り向いて貰える様に努力すれば良いんだ。凄く簡単な事だった。臆病な心が先走って全く考えられなかった。



「うん、行ってらっしゃい祈姉ちゃん。」

「海里…。」

「絶対に兄貴も、そう云ってるよ。」



突発的に強く吹いた風が、私の背中を押した。口角を持ち上げた海里の手が、私の肩をそっと押した。



「何泣いてんの?笑えよ祈。」



貴方の…陽光の声が、耳元でそう囁いた気がした。