衝撃的な内容だった。はいそうですかと呑み込める話ではなくて、だけど何故か納得せざるを得なくて、そして海里を含めた牧瀬家の人達が名前も顔も知らないレシピエントを私は知っている気がして、言葉が出てこなかった。
「兄貴がきっと生きているって云ったのは、兄貴の心臓を貰ったレシピエントの人が生きているって意味だった。祈姉ちゃんを混乱させてしまったのなら謝ろうと思ってた、ごめんなさい。」
目前で頭を下げられた私は、何が起きているのか、何を知らされたのかを理解するのに精いっぱいで、気の利いた発言すらできないままだ。
「待って、顔を上げて海里。」
「ん?」
「それじゃあまるで、海里の話し方はまるで、私のお付き合いしている人が陽光のレシピエントだと云っている様に聴こえてしまう。」
「うん、そのつもりで云ってる。」
「そんな…そんな偶然ある訳な…「でも、ないとも云えないでしょ。」」
満面の笑みを湛えた海里に、息を呑む。震える私の肩にそっと置かれた手のおかげで、僅かに冷静さを取り戻す。鈍くなっている脳味噌に鞭を打って思考を巡らせる。
私の頭に浮かんでいるのは、愛している陽向の胸にあった傷痕の光景だった。その傷をどうしたのかと問うた私に彼は「秘密」だと云って悪戯っ子みたいな笑みを咲かせた。
もし、もしも、あの傷が心臓移植を受けた手術痕だとしたら……。
どうしよう、辻褄が合ってしまう。容姿も性格も全然違うはずなのに、陽向から貴方の存在を感じてしまう事も。時々、陽向が貴方に見えて仕方なくなる事も。彼の鼓動が貴方の鼓動と同じに感じた事も。全部、全部、辻褄が合ってしまう。