ゆっくりと開口した私は、胸の奥に秘めていた事実を懺悔する様に告白した。鈍っている思考で推敲をしながら、順を追って説明した。
陽向と身体を初めて重ねた後の朝、突然覚醒した陽向に腕を掴まれた事。その時の陽向の双眸が、陽向の物ではなく陽光の物に見えてしまった事。陽向が私を「祈ちゃん」ではなく「祈」と呼んだ違和感が、余計に陽光だと錯覚してしまった事。そんな貴方に胸を高鳴らせてしまった事。
そして、陽光に愛おしいと感じてしまった事。あの時に覚えた感情に罪悪感と背徳感を覚えていた癖にずっと秘密にして、こうして陽向と同棲をしてしまった事。
『それでも…それでも、陽向を愛してるの。陽光に愛おしいと感じて、陽向にも愛おしいと感じる軽薄な自分の心が汚らわしく想えて、陽向に軽蔑されるのが恐くてずっと云えなかった…っ…だから…だから私には陽向のプロポーズを受ける資格なんてないの。…っ…ごめんなさい。本当にごめんなさい。』
涙で時々言葉が詰まった。けれど陽向は、私の喉が苦しくなる度に握っている手に力を込めて「大丈夫だよ、祈ちゃん」と底無しの優しさを注いでくれた。私はずっとずっと、こんなにも素敵な人を欺く様な行為を犯してきたのだと考えると、心臓が鋭い刃で貫かれた様な痛みに襲われた。
全ては私のせい。言い訳なんてできない。こんなに彼を傷付けておきながら、陽向と結婚したいと想っているだなんて虫のいい話だ。この期に及んで、彼からのプロポーズに「はい」と答えてしまいそうにっている自分に辟易する。
彼は私の話に傾聴している最中、しきりに目を見開いて吃驚していた。そりゃあそうだろう、恋人が違う男も愛しているのだと云っているのだ。こんな薄情な私に愛想を尽かしてしまっただろう。
嗚呼、痛いな。胸が痛い。陽向ともっと時間を重ねたかったな。結婚して、家庭を築いて、貴方と全ての感情を半分こして生きていきたかったな。