成長する過程において陽光に対する「好き」と云う感情が、家族としてのそれではなく恋愛としてのそれに変わっていたけれど、恐らくそれは陽光にも当てはまる現象だったと思う。


陽光は私よりも私を理解してくれている人間で、一方の私も陽光以上に陽光を理解している自負があった。お互いなくてはならない存在で、他の誰にも打ち明けられない悩みでも彼にだけは相談できた。陽光にだけは無条件に甘えられた。強がりな私でも貴方にだけは頼る事ができた。



『何があったの、祈。』

『どうして何かあった前提で質問するの?』

『んー、だってその顔は何かあった時の顔だから。』

『……。』

『ほら図星。』

『今日、偶然クラスの女子が陽光に告白してる所見ちゃった。』

『断ったよ。』

『え?』

『そんな事で浮かない顔してたの?』

『たまたまとは言え、盗み聞きみたいな事してしまった罪悪感に苛まれてた。』

『ふふっ、祈らしいね。でも断った。だって俺には祈がいるから。』

『あんな可愛い子振ったの?』

『祈より可愛い人なんて俺の中に存在してないよ。ていうか、そんな可愛い理由で落ち込でたとか俺、変に期待するけど良い?』

『……良いよ。』



二人揃って直接的な言葉を口にこそしないものの、私達は恋愛対象として互いを見つめる様になっていた。



その証拠にお泊りの時にあった僅かな距離がなくなって、いつしかお互い抱き締め合って眠るのが普通になっていた。近所のレンタルショップで借りた映画を鑑賞した時は自然と指を絡めて恋人繋ぎをしていたし、キスだって合意の上でした事がある。



直に唇で感じる陽光の体温は熱くて、溶けてしまいそうだったのを覚えている。数秒だけ重なってすぐに離れた相手の唇の温度がジリジリと焦がす様に暫く残っていた。陽光との口付けを思い出しただけで、馬鹿みたいに身体が火照った。だけどそれがやけに心地良かった。