「○○○○○○」


 女の子は僕の本当の名前を呼んだ。

 僕は女の子に本当の名前を呼ばれると、女の子と『さよなら』をしなければならないそうだ。

 僕が、女の子に名前をつけてもらったら、ずっと離れられなくなると教えて、女の子は僕を『ジャック』と名付けたから、女の子はそれを取り消すルールを作ってしまった。


 どうして?

 なぜ?


 僕は女の子から離れたくなかった。

 でも女の子は僕をまるで追い出そうとでもするかのように、僕から離れようとしている。

 女の子は僕がいなければ、困るというのに。

 僕の助けがなければ、何も見る事ができないのに。


 でも僕は間違っていた。

 僕の方が女の子を利用してたんだ。

 僕はいつも同じ場所にいて、そこから離れるのが怖かった。

 そこに居れば、僕は僕だけの世界に浸れて、僕だけの場所で自分が立派だと思っていた。

 本当は、僕と同じような精霊に会うのが怖くて、逃げていた。

 女の子が側にいれば、僕は女の子を助けてると勝手に自惚れて、いい気になっていた。


 実際は、女の子が一緒にいたから、僕は外の世界を見る事が出来た。

 本当はずっと一人では、何もできなかったんだ。

 僕はいくじなしだった。

 それを認めるのが怖かった。


 女の子はそれが分かってたんだと思う。

 だから、女の子は目が見えなくても、自分でできる事を探そうとした。

 僕の力なんかに頼らずに。

 それで、女の子は勇気をもって、強くなろうと決めた。

 僕に見せつけるように。


 女の子にできるのなら、僕もできるはずだ。

 僕はこれから一人で旅に出る。

 そしてそこで見たもの出会ったものを女の子に教えようと思う。

 僕が見たものは、きっと女の子にも伝えられるはずだ。

 だって、僕たちの心は繋がってるから。


 僕は、外に連れ出してくれた女の子に感謝している。

 色んな風に物事を見る大切さを教えてくれたから──