5
飛行機を十分堪能した俺たちは、マックミンヴィルの街の中心部へと向かった。
予約を入れてる宿も、その周辺にあったので、ついでに見ておこうというくらいに立ち寄った。
適当に車を停め、街を散策する。
こじんまりとした、あまり活気のない街並み。
でもまとまりがある一昔前のアンティークな雰囲気に見えたのは、街全体のビルが高くなく、街路樹が多く、そこに歴史があるようなホテル、ビストロやアイスクリームショップなどが並んでいたからだと思う。
適当に歩いている時、ブロックの角、ちょうどUSバンクの看板の下に、ベンジャミンフランクリン──銅像──がくつろいで座ってるベンチがあった。
「時は金なりの人だ」と俺が言うと、ジェナは「100ドル札の人」と言った。
俺たちは彼の隣に一緒に座っておどけ、お互い写真を撮りあった。
銀行がある角にベンジャミン・フランクリンがいると、お金のイメージにぴったりときた。
「アメリカ人は彼の事好きだろうね」
「特に彼の顔が描かれた紙幣が一杯手元にあるとね」
俺も福沢諭吉が一杯手元にあったら嬉しい。
「この街は、これといって見るところはあまりなさそうだね」
ポートランドのダウンタウンを見た後では、俺は少し物足りなかった。
「小さな町だけど、毎年5月中旬の3日間はUFOフェスティバルで賑わうの」
「UFOフェスティバル?」
「1950年にここでUFOが目撃されたことを誇りに思って、1999年から歴史あるマックメナミンホテルで始まったイベントなの」
「ええ、ここでUFOが目撃されたの?」
「そうらしいね」
ジェナは肩を竦め、真実かどうかわからないと困ったように笑っていた。
「どんなフェスティバルなんだろう」
「宇宙人にコスプレしたり、著名人を招いてのショーやパレード、屋台も一杯でるらしい。動物まで宇宙人の格好させられて、それはクレージーで面白いらしい」
「宇宙人って言ったら、ニューメキシコのロズウェルが有名だよね」
「そこもフェスティバルやってるけど、その次に人気の場所がここ」
「へぇ、見てみたかったな。ちょうど終わった後だったんだ」
UFOが現れたというマックミンヴィルの空を俺は仰ぎ、想像力を働かせた。
「あっ、UFO」
「えっ?」
そんな古典的な古い手にもジェナは騙されて、空を見た。
俺がしてやったり! と笑ってると「あっ、ほんとだ。UFOだ」とシレッと返ってきた。
「えっ!?」
俺は空を二度見した。
「メージャルック!」
ジェナが指を差して笑う。
今度は俺が騙された。
『Made you look』
映画『アラジン』の最後にジニーも言っていたセリフ。
『やーい、ひっかかった』てな具合である。
マックミンヴィルの街を散策した後は、宿──ホテルとはまた違う安さが売りもの宿泊施設──に俺たちは到着した。
できるだけ予算を削った旅行を続けてるので、食事も簡単なものが多い。
でも今日はレストランで食べようと、俺はジェナに提案した。
「これだけ案内してもらってるから、今日のディナーは俺が奢るよ」
「いいよ、気にしないで。私もとても楽しんでる。ジャックが一緒に来てくれて最高の旅行」
「いいから、いいから。その代り、今日のディナーは俺が選ぶから。その覚悟で」
「わかった。食べたい物があるのなら、喜んで付き合う」
「よし! それじゃちょっと服着替えてくる」
「えっ、服着替えるの?」
「やっぱりレストランだから」
「でも、私、そんないい服持ってないけど」
「ジェナは何でもいいよ。俺だって、ジャケット一枚、何かの時のために持ってきただけだから、そんなにいい服じゃないんだ。すこしだけきちっとみえるようにっていうくらい」
「わかった。それなら、スカートっぽいの持ってるから、それ着る」
そういえば、ジェナはいつもカジュアルなパンツスタイルだった。
足も長くスタイルもいいから、飾り気のない服でもスタイリッシュに見える。
だから、この日、ジェナが膝までの丈のワンピースを着ているのを見るとドキッとした。
すこしだけ薄らと化粧もして、気を遣っておしゃれしてくれた。
「すごくいいね。そのドレスもとても似合ってて、すごくきれい」
「これドレスじゃなくて、チュニックなんだけど、丈が少し眺めだからワンピースとして着てもいいかなって思って」
ドレス、チュニック、ワンピース、その違いは良くわからないが、とにかく、ふわっとしてすっと足が出ているその明るめの服は、とてもかわいらしかった。
もちろん、ジェナも含めて。
「ジャックもナイス」
ナイスという表現は、とりあえず褒めとけという、とってつけたような感じもするが、俺が気取って腕を突き出すと、ジェナはしっかりと組んでくれた。
「それじゃ、行こうか」
俺はジェナをリードする。
グーグルマップで予め行き先を調べてるから、なんとか目的地につけそうだ。
そんなに離れてなかったので、20分くらいでそこに着いてしまった。
ストリートの端に車を停め、俺はジェナをエスコートする。
精一杯のお洒落をして、二人とも少し背伸びをして大人っぽくふるまっていたように思う。
ジェナが絶対喜んでくれると確信してたので、俺は内心とてもワクワクして、落ち着かなかった。
そして、そこに着いた時、ジェナは思った通りに目を丸くした。
これだけでも、俺は『ヤッター』と心の中でガッツポーズしていた。
飛行機を十分堪能した俺たちは、マックミンヴィルの街の中心部へと向かった。
予約を入れてる宿も、その周辺にあったので、ついでに見ておこうというくらいに立ち寄った。
適当に車を停め、街を散策する。
こじんまりとした、あまり活気のない街並み。
でもまとまりがある一昔前のアンティークな雰囲気に見えたのは、街全体のビルが高くなく、街路樹が多く、そこに歴史があるようなホテル、ビストロやアイスクリームショップなどが並んでいたからだと思う。
適当に歩いている時、ブロックの角、ちょうどUSバンクの看板の下に、ベンジャミンフランクリン──銅像──がくつろいで座ってるベンチがあった。
「時は金なりの人だ」と俺が言うと、ジェナは「100ドル札の人」と言った。
俺たちは彼の隣に一緒に座っておどけ、お互い写真を撮りあった。
銀行がある角にベンジャミン・フランクリンがいると、お金のイメージにぴったりときた。
「アメリカ人は彼の事好きだろうね」
「特に彼の顔が描かれた紙幣が一杯手元にあるとね」
俺も福沢諭吉が一杯手元にあったら嬉しい。
「この街は、これといって見るところはあまりなさそうだね」
ポートランドのダウンタウンを見た後では、俺は少し物足りなかった。
「小さな町だけど、毎年5月中旬の3日間はUFOフェスティバルで賑わうの」
「UFOフェスティバル?」
「1950年にここでUFOが目撃されたことを誇りに思って、1999年から歴史あるマックメナミンホテルで始まったイベントなの」
「ええ、ここでUFOが目撃されたの?」
「そうらしいね」
ジェナは肩を竦め、真実かどうかわからないと困ったように笑っていた。
「どんなフェスティバルなんだろう」
「宇宙人にコスプレしたり、著名人を招いてのショーやパレード、屋台も一杯でるらしい。動物まで宇宙人の格好させられて、それはクレージーで面白いらしい」
「宇宙人って言ったら、ニューメキシコのロズウェルが有名だよね」
「そこもフェスティバルやってるけど、その次に人気の場所がここ」
「へぇ、見てみたかったな。ちょうど終わった後だったんだ」
UFOが現れたというマックミンヴィルの空を俺は仰ぎ、想像力を働かせた。
「あっ、UFO」
「えっ?」
そんな古典的な古い手にもジェナは騙されて、空を見た。
俺がしてやったり! と笑ってると「あっ、ほんとだ。UFOだ」とシレッと返ってきた。
「えっ!?」
俺は空を二度見した。
「メージャルック!」
ジェナが指を差して笑う。
今度は俺が騙された。
『Made you look』
映画『アラジン』の最後にジニーも言っていたセリフ。
『やーい、ひっかかった』てな具合である。
マックミンヴィルの街を散策した後は、宿──ホテルとはまた違う安さが売りもの宿泊施設──に俺たちは到着した。
できるだけ予算を削った旅行を続けてるので、食事も簡単なものが多い。
でも今日はレストランで食べようと、俺はジェナに提案した。
「これだけ案内してもらってるから、今日のディナーは俺が奢るよ」
「いいよ、気にしないで。私もとても楽しんでる。ジャックが一緒に来てくれて最高の旅行」
「いいから、いいから。その代り、今日のディナーは俺が選ぶから。その覚悟で」
「わかった。食べたい物があるのなら、喜んで付き合う」
「よし! それじゃちょっと服着替えてくる」
「えっ、服着替えるの?」
「やっぱりレストランだから」
「でも、私、そんないい服持ってないけど」
「ジェナは何でもいいよ。俺だって、ジャケット一枚、何かの時のために持ってきただけだから、そんなにいい服じゃないんだ。すこしだけきちっとみえるようにっていうくらい」
「わかった。それなら、スカートっぽいの持ってるから、それ着る」
そういえば、ジェナはいつもカジュアルなパンツスタイルだった。
足も長くスタイルもいいから、飾り気のない服でもスタイリッシュに見える。
だから、この日、ジェナが膝までの丈のワンピースを着ているのを見るとドキッとした。
すこしだけ薄らと化粧もして、気を遣っておしゃれしてくれた。
「すごくいいね。そのドレスもとても似合ってて、すごくきれい」
「これドレスじゃなくて、チュニックなんだけど、丈が少し眺めだからワンピースとして着てもいいかなって思って」
ドレス、チュニック、ワンピース、その違いは良くわからないが、とにかく、ふわっとしてすっと足が出ているその明るめの服は、とてもかわいらしかった。
もちろん、ジェナも含めて。
「ジャックもナイス」
ナイスという表現は、とりあえず褒めとけという、とってつけたような感じもするが、俺が気取って腕を突き出すと、ジェナはしっかりと組んでくれた。
「それじゃ、行こうか」
俺はジェナをリードする。
グーグルマップで予め行き先を調べてるから、なんとか目的地につけそうだ。
そんなに離れてなかったので、20分くらいでそこに着いてしまった。
ストリートの端に車を停め、俺はジェナをエスコートする。
精一杯のお洒落をして、二人とも少し背伸びをして大人っぽくふるまっていたように思う。
ジェナが絶対喜んでくれると確信してたので、俺は内心とてもワクワクして、落ち着かなかった。
そして、そこに着いた時、ジェナは思った通りに目を丸くした。
これだけでも、俺は『ヤッター』と心の中でガッツポーズしていた。