足元のスノコがガタンと鳴る。
「あ、あの、三条くんっ! あたし、やっぱりお母さんに話すっ」
「あんまり気安く呼ぶな。俺に関わるとろくなことがないぞ。いいか、絶対に親には言うなよ」
「でっ、でもね? そのままお家に帰ってお父さんお母さんがその顔見たら、きっとそれどうしたのって――」
「そんなのうまく取り繕うからいい。お前はなにも気にするな」
「で、でも」
 思わず下を向く。
 彼が揃えて投げたローファーが、パタンとコンクリートを鳴らした。
 足元では、長くなった彼とあたしの影が、朱色をバックにして重なっている。
 その影を追ってすっと目を上げると、あたしはちょっと肩をすぼめて彼の背中に近寄った。
「あああ、あの、ほんと、ごめんなさい。それならね? あたし、なにか三条くんのためにできることない? お詫びというか、罰というか」
「は?」
 あたしの言葉を聞いて振り返った彼は、もうこれ以上ないくらいの呆れ顔。
「な、なにかない?」
 グッと背伸びをして、彼に迫る。
 ずいぶん背が高い。
 頭ふたつぶんくらい違うかも。
「あのなぁ……、お前、そんな小学生みたいなこと――」
「あ、あの、なんでもいいの。あたし、なんかお詫びしたい。たとえばっ、そのバッグを三条くんの家まで運ぶとか、なんかそんなのっ」
「お前なぁ……」
 吹抜けになっている昇降口の天井。
 ローファーのつま先をトントンとしながらすーっとその天井を見上げた彼は、なにやら少し考えたあと、それからゆっくりとあたしを見下ろした。
「それなら……」
 彼が小さく手招きする。
 なに? ナイショ話?