せっかく組合の人がみんなで準備してきたイベントだったし、せめてあたしと晃だけでも代わりに行きたいって翔太のお父さんに話したら、いろいろ考えて、結局、翔太のお父さんが代わりに行ってくれることになった。
 とりあえず、今日は通常の収穫と箱詰め。そして、ほかのいろんなお仕事。
「すみません。園長先生、急にお願いして」
「いえ、大丈夫ですよ? すぐそこで別の園児を乗せるんで。お母さん、大変ですね。お大事に。さ、光輝くん、行ってきますしましょ」 
 陽介はひとりで登校できるけど、光輝はどうしても無理。
 晃が登校途中に保育園まで連れて行くって言ってくれたけど、保育園は中学校とはまったく反対方向だし、それに晃の登校時間に合わせたらものすごく早く保育園に着いてしまうし……。
 あとで歩いて連れて行きますと保育園に電話したら、お迎えのバスを農園の前で止めてくれるってことになって、ほんと助かった。
「日向ちゃん、お母さんの具合、どう?」
「あ、山家さん」
 庭へ戻ると、お隣のアパートの二階から、いつものほんわか顔が見下ろした。
 しばらくぶり。
 なんか、すっごく大変な仕事を抱えてるって言ってたっけ。
「え? どうして知ってるの?」
「隣の聖弥くんから聞いたよ。昨日、けっこう帰りが遅かったからどうしたのって尋ねたら、宝満家の弟たちの面倒みてたって言うもんで……、ちょっとだけ事情を聞いた」
「そうなんだ。三条くん、いろいろあってたまたまうちに寄ってて。山家さんと三条くん、交流あるんだね」