「だから俺の夢は、自分の実力だけで、もう一度ステージに立つことだ。子ども騙しじゃない、本物の歌をみんなに聴かせて、俺の実力を認めさせることだ」
「ふぅん」
 あんまり興味がない様子の晃。
 その顔を見て、三条くんがちょっとだけニヤリとした。
「晃、実は最近、もうひとつ夢が増えてな」
 そう言って、パッとあたしへ瞳を向けた三条くん。
 え? なに?
「もうひとつの夢は、お前の姉ちゃんとユニットを組んで、一緒にデビューすることだ」
 うぐっ!
 唐揚げが喉にっ!
 晃が「ハァ?」みたいな顔をしている。
 いやいやいや、あたしはまったく望んでないからっ。
「姉ちゃん……、そういうことだったのか」
「うぐぐっ、ちっ、違うっ。あたしちゃんと断ったもんっ。あたしの夢は晃と同じっ!」
「しかし、姉ちゃん……、アイドルを目指すには身長もルックスも足りてねぇぜ……」
 しっ、失礼なっ。
 まぁ、でも確かに、背はちっちゃいし、ルックスもぜんぜんだし。
 あたしの顔が面白かったのか、陽介と光輝がおなかを押さえてゲラゲラ笑っている。
 もうっ、意味なんて分かってないくせに。
 すると、陽介の頭に手を置いた三条くんが、晃の顔を覗き見上げた。
「いや、実はそうでもないぞ? うちのクラスに、なん人かイチゴが可愛いって言ってるやつらがいる。俺の顔にバッグを投げつけたときも、吉松がクラスの男にイチゴを紹介してるときだったんだぜ?」
「え? 翔太兄ちゃんが姉ちゃんを男に紹介っ? それはひどい」
 どういう意味だ。
「あたしのこと可愛いなんていう男の子が居るわけないじゃない」