「知っています。なんなら父をここへ呼びます」
 えええ?
 なんで三条くんのお父さんがあたしのこと知ってるのっ?
「俺の父は三条建設の三《さん》条《じょう》欣《きん》弥《や》です。こちらの警察署連絡協議会の委員で、会社を挙げて警察に協力させて頂いているので、ご存じと思いますが」
「あー、あの三条建設の社長さんか」
 お巡りさんがちょっと考えている。
 社長さん?
 三条くんのお父さん、社長さんなんだ。
「彼女の母親は、支払いを娘にさせるほどの多忙さです。彼女は母親に心配を掛けたくないんです。学校に対しても同様です」
 うわー、確かに心配を掛けたくないのはそうだけど……、それを三条くんに言わせてしまうなんて。
 お巡りさんが、運転免許証を三条くんに返しながら、ちょっと笑顔を見せた。
「そういうことか。それなら、キミのお父さんと電話で話をさせてもらえるかい? わざわざ来てもらわなくてもいいから」
「はい。よろしくお願いします」
 三条くんがスマホを取り出す。
 画面をタップしながら、チラリとあたしを見た彼。
 数回のコールのあと、すごく渋いバリトンの声がスピーカーから漏れた。
『珍しいな。お前から電話してくるなんて』
「父さん、ちょっと頼みが――」
 かくかくしかじかと、「友だちが困っている」とか言って三条くんが事情を説明している間、お巡りさんはじっとあたしの顔を見ていた。
 まだ疑ってるのかな。
「そういうことだから、ちょっと身元保証してくれよ」
『お前、その子って、もしかして』
「ああ、例のイチゴの子だ」
『がははは! お前の顔にバッグ投げつけた子だな』
 えええ?