お巡りさんが、ちょっと怖い顔であたしを見た。
「なるほどね。キミ、これ本当に支払いのために持ってたの? 家のお金を勝手に持ってきたんじゃないだろうね」
 あたしがそんなことするわけないじゃないっ。
 でも、この状況からしたら、やっぱりそう思われても仕方ないよね。
 ぜんぶあたしのせい。
「えーっと」 
「それならもう、学校の先生に来てもらおうか。先生にキミの身元を証明してもらおう。そして、お金のこと、先生と親御さんと一緒によく話してね」
「え? いや、あの――」
 そう言ってお巡りさんが電話の受話器に手を掛けたとたん……。
「ちょっと待ってくれませんか」
 ハッとして見上げる。
 三条くん、ものすごく怖い顔。
「ん? なんだい? 彼氏さん」
 かかか、彼氏さんっ?
「これって、わざわざ学校に連絡してことさら荒立てることですかね。彼女はまだ学校へ連絡することに同意もしていませんが、それはプライバシーの侵害に当たりませんか?」
 三条くん、ちょっと怒ってる。
 でも、すごく冷静。
「俺が彼女の身元を証明します」
 三条くんはそう言うと、お尻のポケットから革のお財布を取り出して、そこからカードのようなものを出した。
 あれは、運転免許証だ。
 え?
 運転免許証?
 どうして、高校一年になったばかりの彼が免許を持っているの?
「三条くんか。しかし未成年のキミでは、彼女の身元保証人にはなれない」
 お巡りさんは、三条くんの免許証を見ながらなにかメモをとっている。
 なにがどうなっているのか、意味が分からない。
「それなら、俺の父親ならいいですか?」
「キミのお父さんは彼女のことを知っているの?」