「えーっと、あと、納品書が入ってました。宛名は『宝満農園』って書いてあって、イチゴを詰める紙箱の納品書で……」
「あー、キミ、あそこの娘さん? なんでそんな大金持ってたの?」
「あの、お母さんの代わりに箱屋さんへ支払いに行くために……」
「ふぅん」
 お巡りさんがなにか考えている。
 後ろのもうひとりのお巡りさんとなにか小声で相談して、それからパッと笑顔をあたしに向けてくれた。
「キミの封筒、届いてるよ。キミが話してくれた行動経路と時間、それと中の伝票からみて、キミの物に間違いないだろう」
「えっ? 本当ですかっ! よかったぁ!」
 思わず、横に立っている三条くんを見上げた。
 チラリとあたしに目をやった彼は、そのままなにも言わず立ったまま。
 あ……、ごめんなさい。
 ぜんぶあたしが悪いのです。
 お巡りさんが、ちょっと顔を低くしてあたしを覗き見上げる。
「ただ、キミが宝満日向さんだと証明するものが必要かな。学生証とか、パスポートとか。顔写真付きで、キミが宝満さんだって証明できる公的なもの」
「えっと、パスポートなんて持ってないし……、学生証も、まだもらってないんです」
「もう四月も終わろうかっていうのに、まだ学生証もらってないの?」
 今年から、学生証が交通系ICカードをベースにしたものに変わるらしくて、一年生のぶんはまだ作るのが間に合ってないんだって。
 学割定期券とか買う生徒には、個別に在学証明書を発行しているみたい。
「そうなんだ。そしたら、親御さんに来てもらってもいいよ?」
「え? でも、お母さんは無理です」
「お父さんは?」
「お父さんは……、その……、居ません」