「それはおかしい。子は親の道具じゃない」
「えーっと」
 あたしは道具なんかじゃないもん。
 お母さんも、あたしを道具だなんて思ってないはず。
 あたしは、みんなのために一生懸命頑張ってくれているお母さんを、少しでも助けたいだけだもん。
「ふん。まぁ、とりあえず交番に行くぞ」
「え? いや、先にお家に帰って三条くんにお金返すから。三条くんはそのまま帰って? あとは自分で捜す」
「交番は通り道だ。もう誰かが拾ってくれているかもしれない。届けは早いほうがいい」
「えーっと」
 でも、これは三条くんの言うとおりだ。
 大人しく言うとおりにしよう。
 でももう、誰かイジワルな人が拾って、それでご飯を食べてるかもしれないよね。
 お母さんに、なんて言って謝ろう……。
 お年玉で払ったって言ったら、余計に怒られそう。
 もう……、そうとうヘコむ……。

「現金二万五〇〇〇円入りの封筒? どんな封筒かな? 中にキミのものと分かる書類かなにか入ってた?」
 初めて入った交番。
 うわぁ、お巡りさん、ちょっと怖い。
 パイプ椅子に座るように言われると、三条くんは「俺はいい」と言って、座ったあたしの横に立った。
 なにそれ、保護者みたい。
「最後にその封筒を見たのは、いつ?」
「最後に見たのは……、家を出るときで、朝、七時半くらいです」
 本当にあとはひとりでいいから先に帰ってって何度も言ったけど、三条くんは「はいはい」って言いながら、結局一緒に交番へ入って来た。
 お金はあとでアパートへ持って行くって何度か言ったんだけど、最後は「うるさいっ!」って怒鳴られて……。