「ちょっと待て。その箱屋ってのはどこだ。もう閉まるんじゃないのか?」
「もうっ! 急ぐって言ってるでしょっ? 箱屋さんはそこの農協の裏っ!」
「近いな。それなら先に支払いに行こう。捜すのはそれからだ」
「だからっ、お金は家に帰らないとないのっ!」
「うるさいっ!」
 うわぁ、もう本気で怖いよぅ。
 え? なに?
 あたしを睨みつけながら三条くんがお尻のポケットから取り出したのは、それはそれは立派な皮のお財布。
 彼が唇の端をしかめながら、チラリとその財布の中に目をやる。
 おおう、いかにも『ガオカ』っぽいお財布だ。
 あたしの赤リボン白猫の小銭入れとは大違い。
「家に帰っている暇はないだろ? すぐ行くぞ」
「え? でも……」  
 ギロリとあたしを睨みつけた三条くん。
「俺が立て替えてやる。二万五〇〇〇円だろ? それくらいはいつも持ち歩いてるから心配するな。さっさと支払いを済ませて捜すほうに専念するぞ」
「え? ええ? ええぇぇーーっ?」