「かなり治ったわね。もうキズテープ貼らなくていいんじゃない?」
「そうですか? えへへ、よかった。すっごく恥ずかしかったんで」
 水城先生は、きょうもすっごくキレイ。
 最近は、お昼休みになると、こうして保健室にお邪魔することが多い。
 実はあれから、三条くんとはぜんぜんしゃべってない。
「でぇ? あの三条聖弥から誘われたっていう話、結局どうなったのよ」
「え? あー、いま、イチゴが旬でとっても忙しいし、あたし、そんなよく知らない男の子と一緒に歌なんて歌いたくないし」
「ふぅん。まぁ、正解かもねぇ。あいつ、ちょっと面倒くさそうだから」
「いいんですか? 先生がそんなこと言って」
 あたしの足から剥いだキズテープをクシャっとして、ゴミ箱に放り投げた水城先生。
 先生は、あんまり三条くんのこと好きじゃないみたい。
「私はさぁ、ああいう『俺、金持ちで、イケメンで、めっちゃスゴイっしょ』みたいなやつが一番嫌いなのよねぇ」
「あはは。でも、そこまではない気もするけど」
「へぇー、もしかして、パンツ見せろなんてデリカシーのないこと言われたのに、けっこう好きになっちゃった?」
 勘弁してください。
 あたしも、ああいうタイプは苦手です。
 結局、あの「俺と一緒にプロを目指そう」には、「あたしは別にプロになんてなりたくない」って即答した。
 確かに、彼の歌はスゴイと思った。
 そりゃ、CD出したことあるくらいだし、一般人とは違うよね。
 でも、あのデリカシーのなさと傲慢な感じは、どうしても好きになれない。
 先生の話によれば、三条くんは先生たちの間でもけっこう有名らしい。