それと、雑木林の外、前の道から敷地に入る門のところに置いてある自動販売機では、新鮮な卵も売っている。
 山家さんは、ジャムも野菜も卵も、とにかく我が宝満農園の商品をいつもたくさん買ってくれる、一番のお得意さまだ。
「あ、そういえば、駅前のスーパーに出してるジャム、ちょっと減らした? すぐ売り切れちゃうんだけど」
「うん。ちょっと手が回らなくて並べてもらう数を減らしちゃった。あ、もしかして……」
 山家さんに聞こうかどうか迷ってたけど、ちょっと聞いてみようかな。
 去年の秋から何度か届けられた、宝満農園宛ての励ましのメッセージカードのこと。
 スーパーに出したジャムの空瓶に、『とっても美味しかったです。また楽しみにしています』って書かれたカードが入れられて、それが玄関の郵便受けに入っていて。
 とっても嬉しかった。
 でも、カードには差出人の名前はなくて、お礼を言いたいけど誰だか分からないままで。
「ねぇ、あの空瓶のメッセージカードって、山家さんでしょ?」
「メッセージカード?」
「ありがとね。とっても嬉しい」
「あはは。俺はそんなロマンチックなことしないよ。きっと、すごいファンが居るんだよ。日向ちゃんの」
 とぼけちゃって。
 でも、ちゃんとそのうち、お返しするからね。
「あたしのファン? あはは、ファンかぁ、嬉しいな。でも、あたしじゃなくて農園のファンね」
 三条くんほど熱烈なファンに囲まれているわけじゃないけど、ファンだなんて言われたらやっぱり嬉しい。えへへ。
「さて、そろそろ仕事に戻るかなぁ。取り込みの邪魔してごめん。お母さんに宜しく伝えといて。それと、あんまり無理しちゃだめだよ?」