「大丈夫だ。ハウスの補強は父さんも手伝う。それから……、(のぶ)()
 聖弥くんのお父さんが、掴んだ手をゆっくりと下ろさせながら、とっても優しい声でお母さんの顔を見下ろした。
「信子の夢は、『星降が丘』を作って、その頂上に住んだことで叶ったじゃないか」
「でもっ、まだ残っているわっ! この農園さえなければっ……」
「そのために、今度は聖弥の夢を奪うのか? 僕らの夢は、もう叶った。次は聖弥たち、若い人たちの番だ。夢を追いかける彼らを、聖弥を、しっかりと見守ってやろうじゃないか」
 聖弥くんのお父さんを見上げて、お母さんがわなわなと唇を震わせた。
「あなたっ、私はっ、私はっ……」
 突然、その頬を走った大粒の涙。
 聖弥くんのお父さんが、すっとあたしを見上げる。
「日向さん、さっきのプロポーズ、感動したよ」
「え? あ、あの、あたし……」
「確かに。未成年の結婚には両方の保護者の同意が必要だが、日向さんのお母さんは……、ちゃんと同意してくれるのかな?」
「ええっと……、はい」
「そうか。それなら安心した。じゃ、私も同意させてもらうよ? 聖弥をよろしく」
 うぐっ!
 急に息がっ……。
 茫然としている、聖弥くんのお母さん。
 その後ろで、さらに茫然としている翔太のお父さん。
 翔太と小夜ちゃんは腕組みをして、うんうんと頷いている。
 ハッとして、聖弥くんを見上げた。
 聖弥くんがニヤッとしてあたしを見下ろす。
 足元を見ると、晃に抱きかかえられた光輝と陽介が、ニコニコしながらあたしたちを見上げていた。
 そのとき、ドドドドッと母屋の屋根が揺れた。
 すごい風っ!