ほんとに嬉しい。
 思わず両手を広げた。
 すると頬に触れていた彼の手が、すっとあたしの頭を抱き寄せた。
 ごめん。
 あたし、素直になるね。
 あたしはゆっくりと、掛布団越しの彼の胸に顔を埋めた。
 彼の手が、優しくあたしの背中に回る。
 ベッドから後ろへ落ちそうになったあたしを支えてくれた、あのときと同じ手。
 おでこが彼の頬にぎゅうっと引き寄せられた。
 聖弥くんの胸の鼓動が聞こえる。
「聖弥くん……、なんだか夢みたい」
「うん」
「でも、聖弥くんのお母さん、絶対怒ると思う。いいの?」
「うん」
 ちょっとだけ顔を上げて聖弥くんの顔を見上げる。
「ほんとに? ほんとにほんと?」
「うん」
 おでこに伝わる、彼の温もり。
 これからどうなるか分からないけど、ずっと彼のそばに居たいって、そう思った。
「聖弥くん、あっつい。明日の朝までに熱が下がればいいけど。今日はもうこのまま休んで。でも、聖弥くんのお父さんお母さん、心配してない?」
「そうだな。一応、親父にはここを訪ねることを言ってあるが――」
 そのとき突然、縁側から聞こえたドドドドっと近づく足音。
 ハッ、やばいっ!
 次の瞬間、ドドンと開け放たれた雪見障子。
「姉ちゃん! 大変だっ! ああっ?」
 うわ、晃っ!
「ごごご、ごめんっ、姉ちゃんっ」
「あっ、いや、そんなんじゃないっ!」
 思わず身を起こして、聖弥くんを突き飛ばす。
「うげっ!」
「あああ、ごごご、ごめんなさいっ! つ、ついっ」
 ううっと唸る聖弥くん。
 真っ赤な顔で声を張り上げる晃。