きっと、三条くんが『UTA☆キッズ』に出てたときみたいに、キラキラ輝いている姿をもう一度見たいんだよ。
 その夢、叶えてあげて?
「どうでもよくない。変な気の迷いで、お母さんを悲しませないで? ね?」
「気の迷いなんかじゃない。いまの俺の夢は、お前を幸せにすることだ」
「だから、あたしは幸せだって――」
「日向」
 あたしの言葉を、ちょっと強めの三条くんの声が遮った。
 ちょっとだけ彼がこちらへ顔を向ける。
 どうして?
 本気で、本気の本気で、そんなこと言ってるの?
 あたし、そんな大した女の子じゃない。
 三条くんに幸せにしてもらっていいような、そんなこと許される女の子じゃない。
「あたしに、そんな資格ないもん」
「それは俺が決めることだ」
「横暴」
「なんとでもいえ。俺はもう決めたんだ」
「知らないよ? 後悔しても」
「後悔なんてするか」
「はぁ……」
 あたしは膝立ちになって上げた腰を、もう一度そっと下ろした。
 雪見障子の外、縁側のさらにその向こうから、激しく瓦を叩く雨音が鈍く響いている。
 掛布団にくるまれた、彼の大きな背中。
 あたしはなにも言葉が出なくなってしまって、ただただその背中を眺めた。
「日向、ちょっと聞いてくれ」
 そう言って、ゆっくりと仰向けに戻った彼。
 そして彼は、噛みしめるようにその物語をあたしに語り出した。
「いつか話したっけ。教会の聖歌隊を辞めさせられて、俺が初めてテレビに出されたのは小学校三年生のとき、番組は『UTA☆キッズ』っていう、全国から集まった小学生が歌唱力を競うやつだった」