「あっ、小夜姉ちゃん、どこ行くんだっ?」
手を伸ばしたまま、ポカンとしてその背中を目で追う晃。
「なんだ? あいつ。ずっと学校休んでたくせに」
あたしの横へ来た翔太が、じとりと小夜ちゃんを睨みながらそう言ってあたしにアゴを向けた。
「なんかね? 小夜ちゃん、ニワトリを飼いたいんだって」
「はぁ?」
見ると、小夜ちゃんが鶏小屋の前に腰をかがめて、小屋の中を覗き込みながらじっとしていた。
「あいつがニワトリ飼ってどうするんだよ」
「美味しい卵焼きを作りたいって」
「なんだそれ」
「あはは」
思わず笑ったあたしの顔を不思議そうに眺めながら、翔太は晃にグローブを放り投げた。
「ま、いいや。俺には関係ねぇ。日向、向こうのハウスのオクラ、定植やるって言ってたろ? 今日、いまからやっとこうか?」
「え? ありがとね。でも……、今日はいいかな。その代わり、翔太、よかったら小夜ちゃんの卵焼きの味見役してくれない?」
「毒見役っ?」
しかめっ面の翔太。
あたしは真剣な顔で見つめ返す。
「小夜ちゃん、あたしたちしか友だちが居ないみたいだから。ね?」
向かい合った無言。
しばらくして、じっとあたしを睨みつけていた翔太の目がゆっくりと大きくなって、それからまたすっと怖い目に戻った。
「どうしろってんだ」
「ごめん。あたし、お台所を片付けてくる。その間、ちょっとだけ小夜ちゃんの相手してて?」
「ケンカになるぞ?」
「あたし、ふたりが仲良くケンカしてるの見るの、とーっても好き。あー、でもここのところちょっと寂しいかなぁ。小夜ちゃんがなかなか学校に来てくれないからねぇ……。ね? 翔太」
手を伸ばしたまま、ポカンとしてその背中を目で追う晃。
「なんだ? あいつ。ずっと学校休んでたくせに」
あたしの横へ来た翔太が、じとりと小夜ちゃんを睨みながらそう言ってあたしにアゴを向けた。
「なんかね? 小夜ちゃん、ニワトリを飼いたいんだって」
「はぁ?」
見ると、小夜ちゃんが鶏小屋の前に腰をかがめて、小屋の中を覗き込みながらじっとしていた。
「あいつがニワトリ飼ってどうするんだよ」
「美味しい卵焼きを作りたいって」
「なんだそれ」
「あはは」
思わず笑ったあたしの顔を不思議そうに眺めながら、翔太は晃にグローブを放り投げた。
「ま、いいや。俺には関係ねぇ。日向、向こうのハウスのオクラ、定植やるって言ってたろ? 今日、いまからやっとこうか?」
「え? ありがとね。でも……、今日はいいかな。その代わり、翔太、よかったら小夜ちゃんの卵焼きの味見役してくれない?」
「毒見役っ?」
しかめっ面の翔太。
あたしは真剣な顔で見つめ返す。
「小夜ちゃん、あたしたちしか友だちが居ないみたいだから。ね?」
向かい合った無言。
しばらくして、じっとあたしを睨みつけていた翔太の目がゆっくりと大きくなって、それからまたすっと怖い目に戻った。
「どうしろってんだ」
「ごめん。あたし、お台所を片付けてくる。その間、ちょっとだけ小夜ちゃんの相手してて?」
「ケンカになるぞ?」
「あたし、ふたりが仲良くケンカしてるの見るの、とーっても好き。あー、でもここのところちょっと寂しいかなぁ。小夜ちゃんがなかなか学校に来てくれないからねぇ……。ね? 翔太」