「さっきは失礼しました。勝手にお家にあがってごめんなさい。改めて……、初めまして。宝満日向と言います。小夜ちゃんとは、小学校のとき一緒のクラスだったんですけど」
「こちらこそごめんなさいね? 助けてくれてありがとう。小夜の母です。小夜の大親友がこんなに可愛らしい子だったなんて、ちょっとびっくり」
 さて、あたしはいつから彼女の大親友になったのでしょうか。
 陽の当たる応接室。
 さっき小夜ちゃんが暴れていたリビングにもソファーセットがあったけど、そのうちひとつは小夜ちゃんがお庭に投げてしまったので、とりあえずこっちにって応接室に通された。
「ふん。あと少しで完成だったのに」
 あたしの隣には、下唇を突き出しながら、片肘をついてふて腐れている小夜ちゃん。
「日向さん、紅茶でよかったかしら。いま準備させてるわ」
「え? あ、あたしはなんでも。あのこれ、あたしが作ったイチゴジャムです。きび砂糖で作ってるので、甘さは控えめなんですけど……」
「まぁっ、これ、あなたが作ったの? キレイな色ね」
 うわー、実にお上品。
 ほんと、『奥さま』って感じ。
 お母さんはそれから、「ありがとう」って笑顔で言いながら立ち上がって、あたしから受け取った瓶詰ジャムをドアの外の誰かに手渡した。
 どうやら、お手伝いさんみたいな人が居るみたい。
 お母さんが立ち上がっている隙に、小夜ちゃんに耳うちする。
「で、なんで暴れてたの?」
 ジトッとあたしに目を向けた小夜ちゃん。
「ふんっ。アタシの計画を台無しにしたからよ」
「計画?」