『ジャム子、これ、ぜんぶあんたが作ったの?』
『うんっ。これね? うちのニワトリたちが産んでくれた卵で作った卵焼き。サラダやお味噌汁のお野菜もぜんぶうちの畑で採れたものよ? いっぱい食べてね』
 あたしがよそったご飯を両手で受け取ると、小夜ちゃんはしばらくそれをポカンと眺めていた。
『小夜、日向の卵焼きはマジ旨いぞ? 店で出してもいいレベルだ』
 うわ、三条くん、それは褒めすぎ。
 小夜ちゃんは、『貧乏人のご飯なんて食べられない』って言うかと思ったけど、なぜか、ずっと大人しく箸を口に運んでくれていた。

「……ふぅん、まぁ、そうとうムカつくけど、やっぱり若いっていいわね。あんたがそこまで三条聖弥と仲良くなってるなんて思わなかったわ」
「いやいやいや、お母さん公認の農園スタッフという位置づけなので。あれは、お給料の代わりです。それにもうお手伝いは終わったので、特に顔を合わせることもありませんし」
「ふぅん」
 ニヤリとする水城先生。
 なんですか、その顔。
「と、ところで、あたしに用件ってなんですか?」
「あ、そうそう。あんた、鷺田川さんと仲いいんでしょ? 家に上げてご飯食べさせるくらいだし」
「え? いや、あれは成り行きで」
「そう? ま、いいわ。その鷺田川さんの仲良しのあんたに、ちょっと手伝ってもらいたいことがあんのよ」
「手伝う?」
 
『明日の土曜日、鷺田川家に潜入して、小夜の不登校の原因を調査せよ』
 それが水城先生からの指令。
 なんであたしがっ?
 当然、そう聞き返しますよね?
 そうしたら、耳を疑うような答えが返ってきたのです。