「なんかシレっとしてるわね。プロポーズに決まってるじゃないっ! 『お前を幸せにしたい』なんてセリフ、ほかにどんな意味があんのよっ!」
 うわ、水城先生、なにをそんなに怒っていらっしゃるのでしょうか。
 あたしにも確かにプロポーズのように聞こえたんですけど、あまりにも唐突過ぎて……。
「でっ? あんた、なんて答えたのっ?」
「え? あー、いや、あたしはちゃんと幸せだから心配要らないよ? ……って」
「はぁ? あんたバカなの? 鈍感過ぎっ! 三条もムカつくけど、その歳でプロポーズされるあんたはもっとムカつくわ」
 いや、分かってたんですってば。
 だって、なんて答えていいか分からなかったんだもん。
 あたしの返事を聞いて、一瞬ポカンとした三条くんは、それから苦笑いしながら、「そうか」って小さく言った。
 そして、そのあとはずっと普通。
 学校では顔を合わせば普通に話すし、しょっちゅうじゃないけどSNSのメッセージのやり取りもするし。
 三条くんは、あたしのお母さんのことをとっても心配してくれている。
 でも、小夜ちゃんのこともちょっと心配。 
 実はあれから、小夜ちゃんはずっとお休み。
 詳しくは聞いていないんだけど、なんか体調が優れないんだって。
 翔太もちょっと心配してた。
 もしかして、三条くんの問題発言のせいで体調が悪くなったのかな。
 あの発言のあと、台本どおり小夜ちゃんはギャーギャー言って騒ぎ出したんだけど、なぜかあたしの宝物の弟三人組が温室へやって来たとたん、突然、大人しくなってしまって。

『あ、聖弥さん、ちょっと遅かったぜ。もう、今日のぶんは終わったよ。箱詰めはメシのあとしよう』