「はぁ……、ずいぶん強烈だったのね。こりゃあとでちょっと腫れるかも。あんた、この子になんか恨みでもあんの?」
 保健室の先生がそう言ったとき、ちょうど『みんな帰りなさい』のチャイムが鳴った。
 外はとっても素敵な春の夕暮れ。
 窓のすぐ横で、朱色になり始めた空をバックに、綿菓子みたいな桜のピンクがふわふわしている。
 とってもキレイ。 
 その綿菓子にぼーっと見とれていると、突然、目の前に桜に負けないくらいキレイな先生の顔がぬっと出た。
「うわっ」
「ねぇ、ちゃんと聞いてる? ミサイル娘」
 ミサイルって、そんなにすごい威力だったかなぁ……、あたしのバッグ。
 顔から火が出そう。
「ごめんなさい……」
 入学して新学期が始まったばっかりだっていうのに……、高校生になったら中学のときとは違う可愛らしい女の子になるってお母さんに断言したのに……、どうしてあたしはいつもこうなっちゃうんだろう。
 もう、あまりの子供っぽさに死にたいレベル。
 しかもよりによって、こんな怖そうなほかのクラスの男子の顔にバッグを投げつけちゃうなんて。
「あのっ、彼に投げたんじゃなくて、(しょう)()をやっつけようとして――」
「ショウタ? そしたら狙いを外してすぐそばに居た彼に当てちゃったってわけ? どっちにしろ人に向かって投げたんでしょ? 同じことじゃない。で? 誰? そのショウタって」
「えっと、同じクラスの……、その……、幼馴染みです」
「それで? そのショウタはどこ行ったのよ。ケガ人を女の子に丸投げして居なくなるなんて、なんて男らしくないやつ」
「えーっと」
 違うの。翔太は悪くない。