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「眠ってるみたいですね」

確かに、言われてみるとそうだった。
本来なら大量の睡眠薬を飲めば、吐くか…、ほぼ高確率で〝死ねない〟はず。
それなのにこいつは静かに逝った。
苦しむ顔をせず。俺の腕の中で。

それぐらい、もう弱っていたのだろう…。裸のまま死を迎えたこいつの身体には、今まで苦しんだ傷があった。

死んで…暫く抱きしめていた後、誰にも見られないように、服を着せた。
ベットに寝かせれば、もう目を開く事はないのに女の顔は笑っているように見えた。

息もしていなく、もう冷たくなった頬を撫でる。唇が変色していく…。キスをしていたときの、あの柔らかさが無い。

電話で呼びつけた男は、「…ケイシさんが、後始末するんですか?」と聞いてくる。


──…後始末…


「なんか、今まで結構死体見てきましたけど、なんて言うんですか?ほんと苦しむってより…寝てるって顔ですよね」

「…」

「ケイシさんに看取られて、その子も幸せだったんじゃないですか…」


幸せだったのか。
分からない。
こいつから「好きだ」と言われた事がない…。


「……どうだろうな…」


──…マユは俺を好きだったのだろうか。



頬から頭を撫でた。
こいつ、…マユの頭の形は歪んでいる。
昔から、親に暴力をされていたらしい。小さい時にもその暴力あったんだろう。

成長過程で、頭の形が歪んでしまった…。こんなにも弱々しい体なのに。抱きしめた時、あんまりにも細く、軽くて驚いたぐらいなのに。






呼びつけた男が「俺、運びましょうか」とマユにさわろうとしたから、「触るな」と睨みつけた。


「す、すみません……」


もう、俺以外に触れてほしくない。
自由になったお前に触れていいのは、これから先、俺だけ…。



なあ、そうだろ?



「辛かったな……ゆっくり休め……」