君に朝日を見せたかった

退院した私が連れてこられたのは、1度来たことがあるコウセイの部屋。

「ゆっくり寝とけ」と私の頭を撫でるコウセイは、柔らかくキスをしてきた。

これからの事を考えれば、眠れず。
私はやけに高いマンションの窓から外を眺めていた。もう空はオレンジ色に染まっていた。


「なんかあったか?」


シャワーを浴びに行っていたコウセイが戻ってきて、窓の外を見ていた私を後ろから抱きしめてくる。


「……もう、夜の時間はきらいだなって…」

「ああ…」

「……元々、昼の時間が嫌いだから夜に逃げたのにね…」

「ここから朝日を見ればいい、お前と初めて会ったの朝だったから、…俺は朝が好きだよ」

「私…、まだ思い出せない。コウセイさんといつ会ったの?」

「……思い出さなくていいよ。今までの事も全部」

「…うん」

「ずっとここにいればいい」


ずっと…。
命が尽きるまで。


「…抱けないよ」

「うつしていい」

「コウセイさん…」

「……ケイシって呼べよ」

「……ごめんね……」

「マユ」

「……コウセイさんを殺したくないよ」



コウセイは優しい。
このままでいれば、コウセイは私を抱くだろう。自分の命を犠牲にして。

そしてそのまま私は依存してしまう。今度はコウセイに…。

コウセイに抱かれる喜びを知ってしまったら…。


「俺はお前ならなんでもいい」

「…」

「マユ」

「……ごめんなさい…」

「キスも、それ以上も、したいと思うのはお前だけだ」

「ごめんなさい……」



泣きながらずっと謝り続けたその日の夜。

そんな私は、この部屋で朝日を見ることが出来なかった。